1

ホミサイド/殺人捜査課 シーズン 1

『ホミサイド 殺人捜査課』シーズン1をようやく見終わった。

スーパーチャンネル等で放送されどなかなかDVD化されなかった『ホミサイド 殺人捜査課』だが、やっと今年の6月よりレンタルおよびBOXセットが販売された。ということで僕もつまんでみようとちまちま借りてみたのだったが、いやあ、確かに面白い。

恥ずかしながら今回のソフト化で初めて触れる『ホミサイド 殺人捜査課』なのだが、初めは、中学生の時に毎週欠かさず観た『ヒル・ストリート・ブルース』のボルチモア版なんだろうかとイメージしながら観たところ、回が進むにつれドラマスタイルがバラエティに富んでいる。

基調は犯罪捜査ドラマ、かつ事件がドラマの基軸ではない点では『ヒル・ストリート・ブルース』と同じなんだけど、ちょっといい話に落とし込み気味の『ヒル・ストリート・ブルース』とは微妙に異なる。『ヒル・ストリート・ブルース』の正常進化系ともいうべきか、密室劇だったりラブ・ストーリーだったりコメディだったり、様々なドラマ形態を絡めて刑事たちの生態を描いており、かなり視聴習慣性が強い。

また、ギャング映画が出来そうなやさぐれたキャスティングも魅力的で、ヤフェット・コットー、リチャード・ベルザー、ジョン・ポリト、ダニエル・ボードウィンと勢揃いしている。この強面キャストの中でドラマをリードするのがアンドレ・ブラウアーなんだけど、彼は俳優としてとても偉大だ。一匹狼というキャラクターを守りつつ、TPOをわきまえてテンションをかえる順応性のある表現が、常に犯罪と向き合う男の面妖さを醸し出していた。

加えてなんだ、このドラマ、喫煙シーンがやたらあるのがいいね。もっとも気に入ったポイントだ。登場人物がそろいも揃ってスパスパすってやがる。このヘビースモーカーっぷりはまるまる禁煙をテーマにしたエピソードまであるぐらいで、禁煙宣言した刑事が差別されるという今日では考えられない展開が、吸う人の僕にはしてやったりだったなあ。

オレは全部みたけど忙しい方のために『ホミサイド 殺人捜査課 シーズン1』つまみ観するならこの3エピソード

ホミサイド/殺人捜査課 シーズン 1 Vol.3

6話:「アディーナと三人の男たち」(DISK3)
第1話から11歳の少女が惨殺されるというアディーナ・ワトソン事件を引っ張ってきた『ホミサイド 殺人捜査課』だが、その完結編エピソード。

舞台は取調室オンリーの密室劇で、2人の刑事(ブラウアー、カイル・セコー)が第一容疑者の老人に対して執拗な取り調べを繰り広げる。2人は懐柔したり揚げ足取りをとったりあの手この手のアメムチ戦略で老人からの言質を取ろうとするが、相手の老人もなかなかタフで、いっこうに折れる気配がない。この一進一退の攻防が、なんというか観ていて息詰まるというか、とても息苦しい。

こんな視聴者に対して根気比べを挑むかのような演出を担ったのが、俊才マーティン・キャンベル。さすが『クリミナル・ロウ』を手掛けドラマ慣れしているだけあって、ミニマムな状況にこだわった演出が効果的に効いている。

またこのエピソードは「事件解決の主眼としない犯罪捜査ドラマでどこまで視聴者の興味を引っ張れるのか」という『ホミサイド 殺人捜査課』のもっとも野心的でチャレンジングな命題を見事突破している。やるせない結末を用意したエピソードとなるのだが、「やってやったぜ」という制作陣の達成感が垣間見える。なので、鑑賞後、意外に爽快な気分になれたりする。

ホミサイド/殺人捜査課 シーズン 1 Vol.5

第10話:「災厄の日」(DISK5)
『ホミサイド 殺人捜査課』には、ボルチモア名士(例:ジョン・ウォーターズ)やバリー・レビンソンの知古がゲスト出演しているが、このエピソードはバリー・レビンソンとフィルモグラフィを共にしたロビン・ウィリアムズがアピアランス。

ロビン・ウィリアムズは妻を強盗に襲われて殺された男の役で、妻の死はもとより、事件以降子供たちとの関係が変質してしまい戸惑う様子をニヤニヤしながら演じる。この何を考えているのか判らない煮え切らない態度が、後の『インソムニア』や『デス・トゥ・スムーチー』の小悪党路線に繋がると考えると興味深いものがある。とてもウザいことは間違いないが。

エピソードは、被害者と加害者の間で真実を突き止めようとする女刑事(メリッサ・レオ)の捜査がメイン。物語半ばで逮捕された青年が真犯人ではないのではないかという疑念を抱えつつ、被害者のウィリアムズには犯人に対する同情を呼びかける。しかしウィリアムズはとりつく島もなく、最終的に加害者の青年には決定的な事実を告げられ、女刑事は自分の想いをすべてふいにされる格好となる。

仕事やってりゃダメなこともあるさ的な顛末にしょげる女刑事に、相棒のボールドウィンが「ね、ね、どうだったのよ、教えてよ〜」みたいなKYさまるだしのケアをするオチが泣かせる。

ホミサイド/殺人捜査課 シーズン 1 Vol.6

第12話:「真犯人」(DISK6)
珍しく刑事ドラマしているエピソードで、この回は警察官が関与したと思われる殺人を背景に、あくまでも真実を突き止め正義を行使しようとするブラウアーと警察署内の人間関係を慮って事件をうやむやにしたいヤフェット・コットーの対立が主軸となっている。

捜査の過程で関係ない不良が第一容疑者として浮上するが、ブラウアーは犯人だと信じていない。しかしコットーの強いプレッシャーから致し方なく不良を尋問する。このブラウアーの尋問シーンは鬼気迫るものがあり、無実の人間の隙を突いて巧みに犯人と認めさせる硬軟交えた心理掌握術と無実の人間を陥れようとしなければならないブラウアーの苦悩が描かれている。

こうしてひとまず事件は解決するが、ブラウアーの葛藤をみたコットーは、しばらく考えて悶々とするが、突然感情を爆発させて事件捜査の再開を宣言する。このコットーのパートのシークエンスも、ブチッていう音が聞こえたかと思うぐらい見事なタイミングでキレており、この新進・ベテランの黒人演技対決でなかなか見応えあるエピソードだ。

GSG-9 対テロ特殊部隊

『GSG-9 対テロ特殊部隊』やっと全部見終わった。

実際のGSG-9という特殊部隊は位置づけとしては日本でいうところのSSTに近いもんなのかな。軍に対してアレルギーのあるところでの、微妙な立ち位置の特殊部隊といった感じなのな。このドラマでは、ベラルーシやコソボなど海外出張もするのが珍妙に写るが、軍人じゃないから海外派兵にならんというは国境警備隊という準軍事組織ならではの立ち位置が可能にするマジックだろう。ま、西部警察が瀬戸内海で漁船を爆破したり、もっと古いところいくとワイルド7がベトナムいったりする、所轄や国境に対してはかなり大らかな我が日本国民にとってはどうでもいいとする。

それで、『GSG-9 対テロ特殊部隊』はイケメンとかトルコ系移民とか背か高いだけでキャラが立たないバカとか、個性にムラがあるチームを、サイモン・ペグを10ぺん殴打したような面構えのチームリーダー(声の出演:小山力也。ジャックなんとかと同じ調子なのでかなり混乱する)がシキりながら、いろんな国が地続きのドイツらしいテロ・犯罪に立ち向かうという趣旨だ。

対テロドラマつうとオレはジャックバウアーなんだか、『GSG-9 対テロ特殊部隊』の場合、如何せんドイツだけあって相対的にライトでほどほどなのが魅力。

エアフォースワンを撃ち落としたり核爆弾がロスで爆発したりいきつくところまでいった『24』よりも、アクチュアルな事件が起こるこちらの方が牧歌的でいいかもしれん。ただ、隊員たちの家庭の事情ドラマはかなり不必要で、チームリーダーの奥さんがGSG-9メンバーの兄弟と不倫なんていうメロドラに呆けてしまう。

ということでこれから13エピソードのうち、「つまみ観するならこの3エピソード」ということで、ホームドラマ的要素が削ぎ落ちてくる後半戦から僕が強引に選んでお勧めしてみる。

オレは全部みたけど忙しい方のために『GSG-9 対テロ特殊部隊』つまみ観するならこの3エピソード

GSG9-e7第7話:GSG-9が家族ぐるみのテロリストと対決する話。うん『24』シーズン4と同じなんだ。ごめんな。この家族は学生運動くずれでドイツ赤軍の闘士なんだが、家族の中に年頃の娘がいて、父親のいうことを聞かずアンチ反社会に目覚めるという、普通の精通直後の厨房とは真逆のドラマが展開される。社会がヤダというより両親がヤダなんだよな、反抗期って。無論、アナーキズムを前提にした家族愛も崩壊し、結果的にこのテロリスト一家は救われない。テロも治安維持も家族も、時と場合によっては人を幸せにしないことを描いた好エピソード。

GSG9-e9第9話:GSG-9候補訓練生が自衛隊レンジャー部隊も泣きながらやるという山岳訓練で迷子になるが、それをつけ狙う謎のスナイパーがいて、ひとりひとり候補訓練生を射殺。これを阻止するべく現役GSG-9チームが山狩りを開始。仲間が殺されていなくなっても棄権したものと誤解する勉強マシーンと化した候補訓練生たちと何とか全員救いたいGSG-9、そして何とか全員ぶち殺したいスナイパーの三つどもえの追撃戦が、冒険小説的妙味となっている。ただし45分の枠内でこれをやるので、ドラマ的食い足りなさも残る。

GSG9-e11第11話:ボールペンに仕込まれた液状爆弾で未曾有のテロを引き起こそうとするテロリストVS GSG-9の巻。このテロリストは旧東ドイツの警官でドイツ統一でリストラされたという設定も泣かせるが、最後にボールペン爆弾をどこにしまったかというくだりは哀れ極まりないものがある。テロリストの孤独さとダークサイドに触れた佳作エピソードで、どうしても1本だけのつきあいで勘弁という向きには、正直このエピソードだけで十分かもしれんね。ちなみにテロリスト役の声の出演は中博史。耳をすませば、ジャックとビル・ブキャナンの対決が楽しめるということで、一石二鳥なのである。

1