ミリキタニの猫

THE CATS OF MIRIKITANIドキュメンタリー。無論、多くのドキュメンタリーが事実以上のメッセージを込めて恣意的に作られている通り、路上アーティストをやっているジイさんの人生をなぞりながら911以降の社会に対して懐疑的な意見を述べるというわけだ。

この老人は広島県出身で、どうもWW2以前にアメリカへ流れ着いたのだが、戦中はずっと強制収容所送りにされたらしい。ま、つまりこのじいさんにしてきた反人道的な弾圧が今日も繰り返し行われているのよ、ちょっとヒドくない? ってわけだ。

実際象徴的にWTCに旅客機が激突するシーンとジイさんが絵を描くシーンをカットバックしたり、政府に対する愚痴をジイさんに言わしたりする「演出」がある訳で、この辺に右翼な僕は鼻白む思いだ。

でもまあ、何に付けてもリアルに主義主張がある人間を観るのは楽しいものだ。年金を頑として拒んで年金事務所の人を困惑させたり、オレの描いた絵は高く売れるぞうとインタビュアーに威張ってみたり、ジイさん、寂しいのかいと抱きしめてあげたくなるのだった。

結局、このジイさんは自分のルーツをたどって強制収容所跡地に行くことにするのだが、その地にいってやることといったら絵を描くしかなかったりする。どこへいっても日常茶飯を忘れないその一貫性は学ぶべきところが多い、とてきとう言っておこうか。

トレマーズ・ライジング

トレマーズ・ライジング珍しいフランス産のモンスター映画。そしてV撮り。タコみたいな触手を振り回す化け物が地中に潜り、なんの迷いもなくグラボイドのマネっこをする。

多分、車が空を舞って地面に降り注ぐ描写が大好きな人が作った映画らしく、ミニチュアが宙を舞う描写マニアという人間がいるんだったら、まるでポルノのように思えるんじゃないかね。

えっ、結局おもしろいのかって? つまんねえにきまってんだろ!

いつか眠りにつく前に

Evening
うむ〜女性映画つうのは久々に見たが、つくづくやっぱり性に合わんなあ。

バネッサ・レッドグレーブが死にそうになったので、ナターシャ・リチャードソンとトニ・コレットの娘たちが看取りに来て、母親である自分とレッドグレーブを重ねて感慨にふける現在のパート。レッドグレーブの回想で若かりし頃のレッドグレーブことクレア・デインズのひと夏の恋物語が過去のパート。

映画脳で考えると現在のパートと過去のパートは本質的に同じドラマであるべきじゃないかなと思うが、本作の場合、母親として生きることを再び決意する物語と女として生きる恋物語つうのはあんま符合しなかったりするのがどうもね。僕はただでさえこの手のジャンルは倦厭しているので斜に構えすぎてるのかもしれんが、どうもくえんなあと思う。

キサマ鉄骨でも入っているのかみたいなクレア・デインズの面構えも哀しいし、ゲストのベテラン陣(メリル・ストリープ、グレン・クローズ)の出演もそんなうれしいものではなかったが、奔放なレッドグレーブのDNAを多めに受け継いだという設定のトニ・コレットは、キャラがにじみ出るような感じでよかった。たしかにこの人、普通にフラメンコとかやってそうだからなあ。

88ミニッツ

88min唐突に処刑宣告を受けたアル・パチーノが、正体不明の犯人と対決するサスペンス。

パチーノは犯罪心理分析医で、連続殺人犯を裁く陪審で証言したばかりだったが、その殺人犯の手口を真似た殺人事件が発生する。凄い眼力を働かせて事件の関連性を調べるパチーノだったが、犯人から電話を受け取り「キサマをあと88分後にぶっ殺す!」という脅しを受けてしまう…その時、パチーノは物凄い眼力を働かせながらひたすら困惑する。

アル・パチーノはホント追い込まれる表現ってできない人じゃないかなと思う。あまりに眼力ありすぎで、罠にはめられ憔悴する男というのがまるで板に付いていない。

まあそれでもいい。報復なのか何かの示威行為なのか意図不明の犯人と知恵比べに指名された名探偵という判りやすい図式ではあるので、ケレン味勝負のフーダニットと考えましょう。

ただパチーノが身を置いてるロケーションがあまりにカナダで安っぽすぎ。これは正直どうかと思う。RHIが量産する2時間サスペンスと同じ背景で演技をやらされるパチーノの絵面って、みてらんない。せっかくのパチーノなのに。

バトルフィールド TOKYO

Monsterうそおおげさまぎらわしいで有名なアサイラムによる『クローバーフィールド』便乗作品。

とはいっても、その他のアサイラム作品と比べて頭ひとつ話題性が抜きんでていたようで、普段のアサイラム作品を知る人でも

  1. 舞台が東京
  2. 以下の予告編が煽る通り、手持ちDV風の画調がいつもの特撮・作劇のチープさを隠してくれるはず

という2点セットでワクテカっていたはず。で、つい先週アルバトロス・ネクシードレーベルでリリースと相成ったのだが、いやあ凄いね。舞台が東京つうのはウソ偽りなしだが、どんなにドキュメンタリー風にしてもいつものアサイラムだ。ヘタクソだ。相変わらずやる気がない。

台詞のある日本人のほとんどが日本語ヘタクソつうのも凄いが、怪獣が大暴れしているというのにメインでフレームインしている人以外は、普通に歩いちゃっている。緊張感もなく、逃げ惑う様子も騒いでいる様子もないんだな。

このあまりに真摯さに欠ける映像作りはさすがアサイラムだと逆に関心してしまう。手持ちDVでフィクションという手法は、ウソを真に迫ったものにするためのテクニックであるはずだが、そんなテクを駆使してもサボりたい、ラクしたい、てきとうでいいじゃんというナアナアさをまったく隠せてない。つうか隠す気がない。人をナメきったこの豪胆さはほかの映画人が学ぶべきところなのかも知れない。いちユーザーである僕としてはまったく評価しないが。