ラウンドアップ2010 お勧めだけどDVDスルー その1
人間狩り
原題は Pig Hunt。一応モンスターパニックのジャンルではあるのですが、風味としてはウォルター・ヒルの『サザンコンフォート/ブラボー小隊 恐怖の脱出』ミーツ『グリズリー』と考えてもらえばよろしいのかしら。
珍しいのは、巨大生物との遭遇を話の軸にしつつも、結局森の中のタランティーノシチュエーションが話のキモだったりするところでして、その点は直接的な邦題の方が内容を的確に示しています。
森の中を散策していたらそこは一面マリファナ畑だったってことで、エッオーハレホレ、夢のようだといったところ急転直下の大惨事、都会っ子VSカッペVSへんな邪教集団VS巨大モンスターイノシシの幾どもえの戦いとなります。ふしぎな酩酊描写や首チョンパなどの過激なバイオレンスを交えつつ、マッドマックスみたいな大カーチェイスをクライマックスにもってきています。
というとなんか詰め込みすぎのような気がしないでもないですが、映画のタッチはぶっきらぼうでそこはかとなく心がこもってないので、逆に違和感を感じることなくジェットコースターライドできます。
さすがは、ジェイソンが大気圏で燃えていたらその下で星空を眺めるカップルが指をさして「あっ流れ星だ」という誰も反論できないシーンをクリエイトした才人、ジェームズ・アイザックの演出だけはあります。
100FEET

エリック・レッドというと、自分の分類ではラリー・コーエンと並ぶワンアイディアの帝王という位置づけなんですが、そのキャリアにふさわしいワンアイディアのオカルトホラー。
残念ながら、先行して公開された『ディスタービア』とギミックは同じで、自宅軟禁の刑をされた人がどうしても外に出られないからサスペンスになるという類のもの。『100FEET』の場合だと、旦那の地縛霊がでてくる部屋にどうしても出られないというルールで、かなりアイディア出遅れ損しています。
でも、オカルトホラーとしては画期的なのは、霊体の攻撃が呪うとか変な物をみせるとか観念的なものでなく殴る蹴るというフィジカルなものである点でして、なんだかよくわかんなくて怖い怖いみたいなホラー味よりも『ワンス・ウォーリーアーズ』みたいなDVを受けてぶっ倒れる描写が主体のアクション映画となっています。百凡のJホラーよりも数段気が利いてます。
主演はファムケ・ヤンセン。つんのめってズッコケる様子をさんざんぱら見せてくれますが、白雪姫コスチュームに無駄着替えとかしてくれて目の保養になるんじゃないか、少なくとも麻木久仁子の学生服姿よりは萌えるとは思います。地獄から戻ってきたDV夫役はなんとマイケル・パレなんですが、常にもやもやしているので本人だと判るのはかなり最後の方です。
ブラッド&ボーン 真拳闘魂
マイケル・J・ホワイト、いやMJWアニキや。MJWアニキというと昨年は謎のMortalKombatプロモで白い歯を見せてくれましてゲーマーがガクブルっておりましたが、やっぱしね、アニキはしっかりアクションやってくれなきゃヤダという人には絶対お勧めというかね。
街の大掃除にやってきた風来坊って毎年どこかでみるパターンなんですが、MJWアニキはマッチョのくせに脚も上がるしコンボ技も決まるし、大掃除も色々捗ってます。むしろ、MJWアニキのアクションを堪能するためにこのストーリーラインかなともいえまして、そのアクション偏重の構成は嬉しい限りです。
残念なことにDVDスルーで消化するのにふさわしいボリューム感なのではあるのですが、MJWアニキの技のキレ味は全米公開レベル、そして全世界が納得するレベルですので、フィジカルアクションが好きな野郎は観るしかないでしょう。
昨年の映画じゃないですが、スコット・アドキンスとバキバキに技を尽くした『デッドロック2』も必見やで。
猟犬たちの夜 オルフェーヴル河岸36番地―パリ警視庁(前編/後編)
あるいは裏切りという名のオリヴィエ・マルシャル脚本のTVドラマ、だろか。その他のマルシャル作品がそうあるように、主人公の刑事たちは、性格が破綻しており、もう正義とか見えなくなってきており、仲違いした友とは永遠に決別したままというコンセプト。
2人の刑事がいがみ合い憎しみ合い、共通の獲物を見いだして共闘するけど結局うまくいかんかったというのを4時間たっぷり描く。だから重いです。暗いです。胃にもたれます。
ちょっと違うのは、TAXIシリーズの下手撃ち担当フレデリック・ディーファンタルが主役だという点。なかなかどうして汚れ系のガテンっぷりも様になっていて、スラブチックな黒さでよどみまくりです。
恋するポルノ・グラフティ
X-Gen世代はその背中を見て育ってきた我らがケヴィン・スミス先生のポルノ撮影大作戦。
ネタ的には、ある程度真面目である程度バカバカしくやれる、ほどほどのバランス感覚の持ち主である先生でなければ出来ない振りで、例えば同じくポルノ制作を背景にしたリーリー・ソビエスキー主演の「冒険してもいいコロ!」がきわどいネタを経過した割りに単なるサクセスストーリーにしてしまったのとは相対的に、ちゃんと普遍的な論議が出来る余地を残した意味でよくできたラブストーリーじゃないかとは思います。
普遍的な論議が出来る余地を残したって、ようはなんとも回答のし辛いテーマ、「男と女の友情は成立するか」というのがこの映画の問題点でして、『恋人たちの予感』でもありましたよね。
当然コテコテのX世代野郎な先生ですから、ビリー・クリスタルとメグ・ライアンが選択した答えとまったく同じ回答例で返してきます。無論、この答えが絶対だと結論づけるほど先生も凝り固まって無くて、セックスしてないけど異性の同居人にチンコガン見せする人をジェイことジェイソン・ミューズが演じます。
まあ、友達以上恋人未満のお付き合いをしている方々にはもう一段ステージアップのために見てもいいんじゃないかなあとは思いますけど。あ、先生のファンにもお勧めです。コップアウトよりお勧め。
ラスト・ハウス・オン・ザ・レフト
ウェス・クレイブンの『鮮血の美学』リメイク。『鮮血の美学』はイングマール・ベルイマンの『処女の泉』からプロットを借りていることは有名ですが、てかオリジナルからして神様がどうこうの要素がサクッと省略されているのですが、今回のリメイクに当たってももっと処女の泉感が希薄になっています。
娘を陵辱した悪党と知らずに若者を泊めてしまった父と母がその事実に気付いて凄惨な報復を行うという基本プロットはズレてないのですが、今回娘は死んでいませんし『処女の泉』でいうところの一番年下の少年に当たるキャラも命を落としません。なんつうか爽快バイオレンスです。
ただひたすらに、自分と自分の家族以外はこっぴどく死ね!みたいな独善性だけが強調されるのですが、これこそがいわゆる核家族的メンタリティというやつでして、結局エゴのぶつけ合いで敵味方削り合います。
当然ベルイマンの重さやオリジナルのあーあやっちゃった感なぞ望むべくものもないのですが、よく考えてみたら今日的にモデファイしたら、モンスターペアレント問題こみこみで罪の重さはどうやって償えばええんやろかという考察があるので、これはこれでオッケーです。
オチも悪い冗談みたいでウケます。レンジでチン♪
ちなみにTVドラマ『ブレイキング・バッド』のジェシー役、アーロン・ポール君も出演していて、板に付いた柄の悪さを披露してくれます。
最強絶叫ダンス計画
最終絶叫な、てかもはや邦題の指すところがワケワカになってきているウェイアンズのウェイアンズによるブラザー向けZAZ式コメディ。競合として『鉄板英雄伝説』なんかで知られるセルツァー/フリードバーグなんかがいますけど、ただ低俗なだけでTVからネタを拾わなければならないぐらい底浅のきゃつらに比べると、ウェイアンズは振りのリズム感と多彩な引用もとのバリエーション、政治的配慮を無視したフリーキーさで大差付けてます。
そのウェイアンズもいよいよ世代交代で、主役はデーモン・ウェイアンズの息子、監督はキーネンらのまた従兄弟です。彼らを先頭にいつものマローン、ショーン、キーネンらが登場しておうおう若殿らをもり立ててやんよーと御輿をかついでお祭りワッショイ、ああどの一族でも子供は宝やねえとホックリきますね。
あ、自分的に一番ウケたネタは、ダンス中ステージで出産して、お腹から出た途端ブラザーっぽく決めポーズする赤ちゃん(CG)なんですが、これだけ家族いると出産ってイベントはイージーなことなのかしらね。
ブラザーズ・ブルーム
『ブリック』の天才ライアン・ジョンソンのおしゃれ詐欺師大活躍の巻。『ブリック』ではナードジョックスビッチそして校長といった学園ものでお馴染みなロールを本格ハードボイルドの世界に投入するという荒技で世界の映画ファンを驚嘆させたライアン・ジョンソンですが、今度はエイドリアン・ブロディとレイチェル・ワイズ、マーク・ラファロという大物キャストに菊地凛子を迎えて、自らの映画記憶に則った世界観を見せつけます。
なんというか、『大統領の陰謀』の後に『スローターハウス5』を撮ったジョージ・ロイ・ヒルとか『ノー・カントリー」の直後に『バーン・アフター・リーディング』かよのコーエン兄弟よろしく、名作撮ったご褒美に好き放題やってみやしたって感じなんでしょうか。
まあ、映像スタイル的には『暗殺の森』や『8 1/2』を参考にしたって英語版Wikipediaに書いてありましたけど、実際はもっとキッチュなモンタージュに溢れておりまして、『HELP!/4人はアイドル』あたりを連想してもらえればよろしいのではないかとは思います。確かに回想シーンとはイタリアっぽいかなあといえるのですが、奔放な編集スタイルなんかはリチャード・レスターの影響が強いです。そうそうここでバカみたいにMTVだつうかもしれませんが、映像はもっとオールドスクールです。
こんだけ多趣味なのってどんだけアタイはヒマなのよってレイチェル・ワイズのこんなシーンとか
凛子なんですが、はっきりいって置物ですし、置物だということを自覚しているキャラです。ところが、今回のような映画の場合だと、映像を安定させるために必要不可欠なオブジェでして、所在なさげにしている他キャストを向こうに回しても画面が貧乏にならない役割をひとり担っています。凛子の天性の才というのでしょうか。いやいや凛子をキャスティングした人がえらいのでしょうが、凛子はなんで世界で引っ張りだこなのか判るような気がします。
つづきはまたこんど













